離島の観光産業と "漏損(ろうそん)"

 Leakage というと、一般的には漏れ、漏出、濾出物などを言いますが、2000年代に入り新たな統計学や経済学上の概念として、アメリカの研究所などで Leakage が使われ始めます。 そして2005年頃になると、中国返還10年を経て貨物が経由しない「離岸貿易(三国間貿易)」が増加した香港の経済界がこの概念を "漏損(ろうそん)"という漢字で表現するようになりました。

 さて、この漏損もいくつかの使い方がありますが、地方や離島など経済の中心地や経済活動が活発な地域から離れている場所での経済状況を正確に解説するためには、とても重要な考え方となります。 ここでいう漏損とは、本来は島に還元され、島民の生活を潤させる原資となるべき資産が本土の企業や海外の企業に吸い取られてしまい、島民のために活かされない状況を言います。

 今年3月国連本部で開催された、国連小島開発会議の内容を見ると世界の島々は現在気象変動や環境対策、安全保障対策、医療対策、経済対策などほぼすべての分野で共通した緊急対策が必要な状況となっていることが良く分かります。

 中でも、島民の生活を保障する経済対策として観光客の誘致により島の活性化を実現したいと考え、実行した島々には次のような問題が発生しました。

1.ホテルやそのほかの宿泊施設の急増による水不足、電力不足、下水処理施設の処理能力不足、ゴミ焼却施設の処理能力不足が発生し、結果として一般島民の生活インフラ全般のサービス力が低下した。

2.観光客数が急増したにもかかわらず、行政府には必要なインフラ整備を行う財政収入が得られない状況が長く続く。

3.観光関連事業の多くで"漏損"が確認出来た。 それらには・・・
(a) 外部資本のホテルでは、そのホテルが送り込んだ大量の本土採用のスタッフにより運営されており、地元の雇用はごく限られた職種のみとなっている。 そのため、人件費も本土の銀行に振り込まれる。
(b) 本土の旅行代理店によって作られたアイテネラリー(旅程表)をもとに、島の業者は厳しい安値契約を求められる。 島の業者の通常価格と旅行業者が求めた割引価格の差額(損益)が島の経済にとっては具体的な"漏損"となる。
(c) 本来島内の業者が受けるべき収益から次々と"漏損" が生じているが、その典型が旅行会社により要求されるキックバックあるいはマージンであり、宿泊施設から、レストラン、土産屋にいたるまで旅行業者が手を付けたところではほぼくまなく徴収される。 しかも、現在では海外の旅行業者までが現金でキックバックの支払いを求め、自国に持ち帰ります。

4."漏損" による減収をさらなる観光客誘致により切り抜けようとすると、島の生態系や島の自然が持つ再生力・復元力を越えた乱開発を行うところまで追い込まれる。 その結果、復元が不可能なステージまで環境破壊が進む。 

5.この傾向が進むと、静寂でリラクゼーション空間であるはずのリゾート地にジェットスキーの騒音や拡声器から大音量の音楽が流れ始めるなど、都会のアミューズメント・パークと同じ光景が多く見られるようになり、リゾートとしてのクオリテイを劇的に落とし、観光客が遠のくという悪循環が始まる。

 これは世界に共通する現象ですが、皆さんは今の宮古島はどのあたりにあるとお考えですか?

sustainable development scale (持続可能な開発基準)

9月25日から27日まで、ニューヨークの国連本部で UN Sustainable Development Summit 2015 (持続可能開発サミット2015)が開催されました。 この会議では、17の分野における世界規模でのサステイナブルな開発についての達成目標について協議が行われました。

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現在、国連に限らず世界ではサステイナブルな開発基準についての多くの活動があります。 宮古島プロジェクトでも、以前より研究クラスターの中に 「離島における持続可能な開発基準についてのリサーチ」 を行っており、観光開発を環境および地域の生態系の健全で持続可能な状態を保証できる範囲でどのように実現するかの検討を続けています。

離島における観光開発と持続可能な開発基準については、多くの場合開発業者と地元住民の間で解決しなければならない問題が存在します。 そのため、観光開発にあたり住民側は保全すべき環境権や景観権、地域における信仰や文化活動の継続を阻害されないための権利を保障させるための交渉や、開発業者の合意や保証内容をどのように担保させるかについての交渉など高度な交渉力を持つことが求められます。

日本に限らず、観光開発の持続可能な開発計画に関する地域住民との交渉は長期にわたる多くの交渉プロセスが必要とされますが、日本においては以下に紹介する景観法が交渉過程における実効性を高める拠り所となりますので、参考にして下さい。

景観法(平成十六年六月十八日法律第百十号)

   第一章 総則

(目的)
第一条  この法律は、我が国の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第二条  良好な景観は、美しく風格のある国土の形成と潤いのある豊かな生活環境の創造に不可欠なものであることにかんがみ、国民共通の資産として、現在及び将来の国民がその恵沢を享受できるよう、その整備及び保全が図られなければならない。
2  良好な景観は、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により形成されるものであることにかんがみ、適正な制限の下にこれらが調和した土地利用がなされること等を通じて、その整備及び保全が図られなければならない。
3  良好な景観は、地域の固有の特性と密接に関連するものであることにかんがみ、地域住民の意向を踏まえ、それぞれの地域の個性及び特色の伸長に資するよう、その多様な形成が図られなければならない。
4  良好な景観は、観光その他の地域間の交流の促進に大きな役割を担うものであることにかんがみ、地域の活性化に資するよう、地方公共団体、事業者及び住民により、その形成に向けて一体的な取組がなされなければならない。
5  良好な景観の形成は、現にある良好な景観を保全することのみならず、新たに良好な景観を創出することを含むものであることを旨として、行われなければならない。

以下はこちらでお読みください。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO110.html

観光客の多く訪れる地域での危機管理計画

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最近、世界の離島情報でよく目にするのが2004年のスマトラ沖地震、 2011年の東日本大震災などの大規模災害の後、フイリピン、マレーシア、オーストラリア、南アフリカなどの国々では観光客の多く訪れる地域での危機管理計画が積極的に進められているという記事。

宮古島でも年間の入域観光客数が40万人を越えるということは、少なくとも毎日1,100人、平均滞在日数が3日として最低でも3,300人、出発到着時間のオーバーラップ組を含めると時間帯によっては、5,000人近くの観光客が宮古島各地に滞在していることになります。

更に島民人口が約55,000人ですから、合わせて6万人が何らかの大規模災害で孤立した状況に対応できる対策が、宮古島における危機管理計画と言うことになります。

断片的なものを含め、各国の危機管理計画がネット上で公開されていますので計画の参考にするのも良いでしょう。

それと、南西諸島の場合救助や支援の手が届くまでの時間が本土や本土に近い離島より大幅に遅れる可能性もあります。 少なくとも1週間から10日間独自の地域協力で生き延びる準備が求められます。

更に大切なのが、島の住民たちの自助努力と準備態勢です。
いざ大規模災害が発生した時に、島内でどれだけ多くの家庭が公共のインフラに頼ることなく、

1.自分たち用の飲料水や最低レベルでの家事や洗濯水、1週間以上の長期保存のきく非常用食料を準備できているか?

2.太陽発電パネルや風力発電装置を各家庭が用意しており、夜間の電灯や遠くの中継局のラジオ情報を聞くことができるか?

3.アマチュア無線愛好家が地域内にいて、緊急の際に自分たちの状況や緊急に必要なことをを本土向けに発信できるか?

4.世界の大規模災害発生地で必ず繰り替えされるのが、発生直前及び直後の、スーパーや一般商店への市民の殺到です。

これにより、資金力のある市民が家族や従業員を大量動員して食品や災害時の必要物資を買占め、たちまち店内を空っぽにしてしまい、本当に必要な人には何も残されないという状況になります。

大規模災害の際、一般市民は観光客や経済的理由で買い置きが出来ていない市民、自分では買い物に行くのが難しい高齢者などにも緊急に必要な食料や飲料水、乾電池、トイレットペーパーなどが確保できるように、限られた物資を譲り合うことをしっかりと地域で確認しあうという作業が必要になります。

また、このような買占めラッシュを防ぐことが出来なかった場合を予測して、普段より以下のことを心かけましょう。

a. 生鮮食品以外の米や乾燥麺類など、ある程度保存できる食品はすべて2週間~3週間分を備蓄し、ローテーションで使い続けます。
b. 家庭用常備薬に加え、消毒薬と止血用品を多数用意すること。 それと、洗眼液や目薬も本当に必要になります。
c. 特に女性はトイレが使えない状況では体に大きな負担となりますので、簡易トイレや生理用品、大人用のオシメは絶対に多めに揃えておきましょう。

これは家族単位で大規模災害を生き延びるためのガイドラインの参考例ですが、市民の中の一つでも多くの家庭がこれらの準備をしっかりしていると、災害で限られたインフラしか利用できない場合、特に旅行者や準備をすることの出来ていない高齢者に、より多く利用のチャンスが出てきます。

国や行政の対策を待つ前に、家族でガイドラインを作り準備を進めてみませんか?

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Author:宮古島プロジェクト

宮古島をはじめ離島で暮らす人々の将来のために島を活性化し、島民が心豊かに暮らすことの出来る場所にするための活動モデルをプラットフォーム上で構築するのが、ゆうやなうれ宮古島プロジェクトです。

このブログでは、主に離島の抱える問題に関する世界の参考データや資料を紹介しています。

ゆうやなうれ宮古島プロジェクトはいずれの団体、組織、特定の政治や思想グループにも属さず、影響を受けることの無い完全独立系の活動組織です。

(宮古島プロジェクト 運営管理部)

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