タイ政府国立公園・野生動植物保護局の本気度

 先月、5月17日にCNNやワシントン・ポスト、BBC をはじめ世界のメディアが好感を持って伝えたニュースがあります。 それは、以下のような記事でした。

************************************************
 タイ政府国立公園・野生動植物保護局は5月16日、環境と生態系保護のため世界の観光客に人気の島全域を一定期間観光客の立ち入りを禁止することを決定しました。 この島は、日本でも 「タイ王室御用達の避暑地」 としてよく知られた観光地、プーケットの北西130㎞にあるスミラン諸島のひとつ、コ・タチャイ島です。 島の面積は12平方キロと小さい島ですが、素晴らしいサンゴ礁があり世界のダイバーにとっては理想的なダイビングポイントとして知られ、スクーバダイビングを楽しむ観光客も増えていました。

 国立公園・野生動植物保護局のトゥンヤ・ネシシヤマクル局長によると、「この島の生態系の多様性を守るためには、1日の観光客数は70人以内、観光客の集中するピーク時でも期間限定で最大限1日200~300人が限度です。」 とのこと。 しかし、国立公園・野生動植物保護局が実態調査したところ、最近では毎日2000人もの観光客がこの島に押し寄せていることが分かりました。 

 そのため、生態系への影響調査をすると、海中や河岸地域へのゴミの不法投棄の増加、ダイバー客を運ぶボートの整備不良などによるエンジンオイルや燃料漏れによる汚染、プーケットなど対岸から一泊でやって来て勝手に海岸にテントを設置するダイバーが放置した生ごみや食べ残しなどが散乱する状況となっていました。

 この調査後、国立公園・野生動植物保護局では直ちにコ・タチャイ島を観光客立ち入り禁止に指定しました。 また、今後スミラン諸島の他の島々でも同様の調査を続け、生態系の疲弊が確認された島は速やかに観光客の入域を禁止し復元作業を開始するとしています。 更にタイ政府は、観光客により本来の生態系が失われつつあるところは、生態系そのものが観光資源であるので、その大切な観光資源を守るために離島だけでなく、本土の観光地でも同様に立ち入り期間を制限して、エコロジー環境を守りたいとしています。
*************************************************

 ただ、ワシントン・ポスト紙が伝えるところでは、5月17日現在でバンコクの旅行社の一部でコ・タチャイ島へのダイビングツアーを販売しているところもあり、政府の通達及び実施体制の速やかな徹底が望まれます。 いずれにしても勇断であり、観光資源を守りたいというタイ政府国立公園・野生動植物保護局の本気度が伝わります。

 日本で考えると開発途上国では、国家単位での政策決定や実行に時間がかかる、あるいは形にしにくいとの考えもあるようですが、2000年以降特にアジア、中東、アフリカにはアメリカやイギリスの大学院を卒業し自国に戻り、世界基準の的確な政策決定モデルを作ることのできる多くの若者が政府中枢で活躍しています。

 下の写真は、来間島の長間浜ビーチのようにみえますが、コ・タチャイ島のビーチです。
koh-tachai-kurima580.jpg
Photo courtesy: similan-islands.com/koh-tachai

危機管理は、誰の指示によってなされるのか?

冷戦時代に危機管理という言葉が使われ始めて以来半世紀以上になりますが、当初は核戦争を想定した地下シェルターの建造など、ややSFがかった話が危機管理として私たちの少年期の心に残っています。

しかし、現在危機管理には国際紛争から、経済崩壊、異常気象、 生態系破壊、食料危機、パンデミックス(感染症の世界的大流行)、地震や津波などの大型災害、近隣諸国からの大気汚染や原発事故による放射能汚染の際の対応など検討すべき危機管理の種類が増えました。

また、以前は 「蓋然(がいぜん)性あるいは可能性が低いことに、どこまで本気で準備をする必要があるのだ」 といわれていましたが、今では危機管理の必要性がより高い現実性へと変わってきています。 危機を予測するパラメーターも、分子となる条件設定の数値が多くなるほど媒介変数値も高くなっています。 つまり、何百年に一度の災害も、その災害の種類が増えると蓋然性の問題であっても当然確立は高くなります。

このような時代に生きる私たちは、咄嗟の出来事に直面した時どのように行動すべきかを常に考えておく必要があります。

2011年の東日本大震災の検証からも、津波が襲ってくると知った時家族や個人がそれぞれどのように行動するかによって生死が大きく分かれる結果になっていました。

また、注目すべきは最近の海外を含めた 「被災地における住民の避難行動は何によってなされたのか?」 という問題です。
政府、行政、コミュティ、町内会、家族、個人の判断など、どのレベルの判断に従って 「避難した」 もしくは 「非難しなかった」 を決定したかを詳しく調べることで、私たちが 「次」 に備えるべき事が何かを考える大切な資料となります。

これらのデータの分析とともに必要な作業は、災害の際にどうして生き延びるかの対応力を子供から大人まで個々にとのような方法で付けさせるかの研究です。
それとともに 「想定を超えた」 に挑戦し、想定範囲を可能な限り大きく広めてそれぞれの可能性についての対策を検討すべきです。

これらの検討に役立つのが、世界各国の赤十字のホームページにある災害対策です。
それぞのの国、地域が過去の色々な被災体験を基に様々な災害への備えと災害時における対応が掲載されていますので、とても参考になります。

宮古島プロジェクトと宮古島キッズネットでは、現在これらの国内外のデータにアクセスしやすく、研究資料を収集しやすいポータルサイトの制作を開始していますので、間もなくそれぞれのプラットフォーム上で公開する予定です。

下の写真はサンフランシスコ市危機管理局の 「災害初期の危機的72時間を生き延びる」 ためのウエブサイトです。 参考にして下さい。
500-SF72.jpg
Photo Courtesy: San Francisco Department of Emergency Management

ヴィクトリア大学の Dr. Geoff Bertram 教授

私たちが、離島の諸問題について検討を進める時によく参考にさせて頂くのが、ニュージーランドのヴィクトリア大学の Dr. Geoff Bertram教授の論文です。
Bertram 教授は現在、ビクトリア大学の政治・政策研究所の上席研究員であり、このブログでも以前何度か紹介した、国際小島研究協会 International Small Island Studies Association(ISISA)の学術研究者として多くの論文を発表しています。

Bertram教授は、離島やマイクロ・アイランンド諸国という言葉で表現される、とても小さな島国における行政運営についての研究もあります。 離島でのインフラ整備から社会福祉にいたる行政全般にわたり、小さい行政単位独自の問題点が多くありますが、それらに対するアプローチや解決法についても学ぶべき多くの提言があります。

著作権上、ここで翻訳しご紹介することは出来ませんが、Dr. Geoff Bertram, Victoria University at Wellington と検索すると、その研究内容がたくさんネット上に公開されています。

また、離島問題研究者のためのネットワーク作りには、国際小島研究協会 International Small Island Studies Association(ISISA) の活動内容がとても参考になります。

ISISA400.jpg

プロフィール

宮古島プロジェクト

Author:宮古島プロジェクト

宮古島をはじめ離島で暮らす人々の将来のために島を活性化し、島民が心豊かに暮らすことの出来る場所にするための活動モデルをプラットフォーム上で構築するのが、ゆうやなうれ宮古島プロジェクトです。

このブログでは、主に離島の抱える問題に関する世界の参考データや資料を紹介しています。

ゆうやなうれ宮古島プロジェクトはいずれの団体、組織、特定の政治や思想グループにも属さず、影響を受けることの無い完全独立系の活動組織です。

(宮古島プロジェクト 運営管理部)

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

RSSリンクの表示

リンク

QRコード

QR
Copyright © 宮古島プロジェクト